ONE〜想いは一つ〜
私がいた前の病院は、高度救命センターだった。

元々、そこの医大を出たから勤めていたんだけれど、救命センターで働く事は私の夢だった。
夢を追いかけたかった。

追いかけて、突き詰めたかった。

でも…そう、何かが私の中で弾けた。
助けては運ばれてくる、人の多さに。

そして、私は仕事を離れた。

でも、また救命に戻ってきた。
いきさつは何であれ、戻ってきた。

やっぱり、私はどこまでいっても救命からは離れられないのかもしれない。

「何考えてるの?夏帆」

「え?あぁ、麗華。ちょっとね…」

「これ、医局にって、師長が。頼んでもいい?」

「ん、分かった」

麗華から、医局に持って行ってと頼まれた書類を預り、医局に向かった。

「すみません。先生いらっしゃいますか?」

医局の誰宛てとはなく、先生に渡してとの事で、声をかけたが誰もいなかった。

仕方なく、医局長の机に置いていこうとした、その時…後ろに気配を感じた。

「あ、中元…先生」

「どうした?ん?書類か?」

私の手元にある封筒を指差した。

「は、はい。師長から医局に持って行くようにと」

「ん、お疲れ」

私から封筒を受け取ると中元先生は、背を向けて椅子に腰をかけた。

それ以上、そこにいる理由も見つからない私は、頭を下げて医局から出ようとした。

「な…なんで…なんだよ」

「え?」

振り返った私は、力強い腕に抱き寄せられて、キスをされた。


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