ONE〜想いは一つ〜
いきなりの事だった。

何が起きているのか、すぐに理解出来なかった。だけど、今目の前にあるのは中元先生の顔。
そして、私は中元先生にキスされていた。

「っ…はっ…」

本当だったら嫌な奴!とはねのけたいのに出来なかった。
私は、力強く抱きしめられたその腕をはねのける事が出来なかった。
逃げるどころか、激しくなるそのキスに身を任せていた。
私は中元先生を受け入れていた。その事に中元先生も気づいたようで、抱きしめる腕がさらに強くなった。



「いや、谷本先生…それはダメですよー!さすがに女子にそれやっちゃ…」

頭の片隅に麗華の声が聞こえてきた。

ドンッ…

「っ…はぁ… 、っし、失礼しました」

私は中元先生を突き飛ばし、その場から逃げた。

どうして…
どうしてあんな事…

私…中元先生にキスされた…それに私、なんで拒否しなかったの…

ナースステーションにそのまま戻る事も出来ず、トイレに向かった私は、トイレで激しく音を立てる胸の鼓動と戦っていた。

「あれ?夏帆遅かったじゃない?医局にいなかったよね」

「…っ、ごめんね。トイレに行ってたんだ…」

「そっか」

トイレに行っていた。
それに、納得したのか麗華はそれ以上何も聞いてはこなかった。
中元先生も、何も言わなかったんだろう…、きっと。

私、これから中元先生と顔合わせ出来るんだろうか。
あと少しなのに…



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