ONE〜想いは一つ〜
「佳織、医局長から南條さんはどうだろう?って何回も聞かれてるんどけど。返事どうするの?」

由香里からの電話だった。

どうするの、って。


「どうしよう?」

「断るんでしょ?早めに返事した方がいいよ」

「あ、うん。だけど…」

「ん?もしかして来る気になったとか?私としては大歓迎だけど?」

「そっち大変なの?医師不足とか…」

「うーん。大変なのかな。新しい看護師は入ったから看護師は大丈夫なんだけどね。確かに医師不足かもね。佳織が辞めてから二人ほど退職して、それから中元先生が休まずに詰めてるんだもん」

「え?そうなの?」

「そうよ。中元先生、あんな感じだけど責任感は人一倍でしょ。何も文句言わないしね。それより、佳織と連絡取りたがってたわよ」

連絡…
黙って帰ってきたし。
そりゃそうか。

言葉に詰まっていると

「素直になりなさいよ。あんたも夏帆と一緒なんだから」

素直か…

「うん、ありがと。行く事になったらよろしくね」

「心にもない事言わないの。じゃあね!」

由香里の笑い声で電話は切れた。

心にもない、か。

私の中で、違う思いが重なった。

そう、辞めたあの時、気がついたあの気持ちに。
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