恋愛に無関心の院長が恋に落ちるわけがない
残されたリンとの時間が限られている現実から目をそむけ、『治して治して』と何度も声を張り上げ、取り乱す浅永さんに声をかけて手を握る。
「いっしょに頑張るから、リンを助けて!治して!」
浅永さんの苛立つ気持ちが、大きな声となって出て、混乱が続いたままで収まらない。
浅永さん、リンは頑張った、十分なほど頑張ったんだよ。
「治らないわけがない!」
私の手を振りほどき泣きわめき、力の限りを尽くして暴れる。
浅永さん、泣きたいのに泣いていないんだ。
泣いたら周りが困る、心配かける。
そうして今まで、ずっと耐え忍んで泣いていたんだ。
泣かせてあげないと、心が壊れる。無意識に、浅永さんを抱き締めていた。
私には、浅永さんの気持ちが痛いほどわかるから。
「浅永さん、辛いんですから泣きましょう、心が限界で泣かせてって叫んでます」
言葉が合図みたいに浅永さんが、声を飲み込むように号泣した。
泣いてください、気がすむまでたくさん泣いて。
浅永さんを制止して、強張っていた体から力が抜け、熱い血が全身に流れ回った。
力いっぱい握られ、浅永さんの手の痕が、くっきりと白く残った手で背中を撫でた。
私には受け止める力がある。
「辛いですよね」
浅永さんの瞳からは、涙が堰を切ったように溢れ出し、高ぶる感情はむせび泣きとなって吐き出され、私のスクラブを涙で濃く染めて激しく泣いている。
「今まで、お辛かったですよね」
声が震えてしまったら、浅永さんが驚いたように、そっと顔を上げた。
「いっしょに泣いてくれてるんですね」
激しく泣いていた浅永さんの声が、泣き声にならないような声を漏らしながら、泣いている。
「私はひとりじゃないんですね、いっしょに泣いてくれる人がいる」
私の手を、ぎゅっと握り締めてきた。
苛立つ心が潮が引くように静まり、浅永さんの心が落ち着きを取り戻した。
「どうぞ」
院長が、私たちにボックスティッシュを差し出した。
「先生にも看護師さんにも、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
浅永さんが、ティッシュで涙を拭きながら震えているから背中をさすった。
「迷惑だなんて思っていませんよ、泣くときは、しっかりと泣いてください。僕も看護師さんも、オロオロも驚きもしませんから大丈夫ですよ」
完全に、浅永さんが落ち着きを取り戻した。
さりげなく立ち上がり、冷蔵庫からチョコレートを持って来た。
「浅永さん、お腹すきませんか。はい、どうぞ、院長もどうぞ」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとう」
目と目が合った院長の瞳が、うっすらと光っている。
「いっしょに頑張るから、リンを助けて!治して!」
浅永さんの苛立つ気持ちが、大きな声となって出て、混乱が続いたままで収まらない。
浅永さん、リンは頑張った、十分なほど頑張ったんだよ。
「治らないわけがない!」
私の手を振りほどき泣きわめき、力の限りを尽くして暴れる。
浅永さん、泣きたいのに泣いていないんだ。
泣いたら周りが困る、心配かける。
そうして今まで、ずっと耐え忍んで泣いていたんだ。
泣かせてあげないと、心が壊れる。無意識に、浅永さんを抱き締めていた。
私には、浅永さんの気持ちが痛いほどわかるから。
「浅永さん、辛いんですから泣きましょう、心が限界で泣かせてって叫んでます」
言葉が合図みたいに浅永さんが、声を飲み込むように号泣した。
泣いてください、気がすむまでたくさん泣いて。
浅永さんを制止して、強張っていた体から力が抜け、熱い血が全身に流れ回った。
力いっぱい握られ、浅永さんの手の痕が、くっきりと白く残った手で背中を撫でた。
私には受け止める力がある。
「辛いですよね」
浅永さんの瞳からは、涙が堰を切ったように溢れ出し、高ぶる感情はむせび泣きとなって吐き出され、私のスクラブを涙で濃く染めて激しく泣いている。
「今まで、お辛かったですよね」
声が震えてしまったら、浅永さんが驚いたように、そっと顔を上げた。
「いっしょに泣いてくれてるんですね」
激しく泣いていた浅永さんの声が、泣き声にならないような声を漏らしながら、泣いている。
「私はひとりじゃないんですね、いっしょに泣いてくれる人がいる」
私の手を、ぎゅっと握り締めてきた。
苛立つ心が潮が引くように静まり、浅永さんの心が落ち着きを取り戻した。
「どうぞ」
院長が、私たちにボックスティッシュを差し出した。
「先生にも看護師さんにも、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
浅永さんが、ティッシュで涙を拭きながら震えているから背中をさすった。
「迷惑だなんて思っていませんよ、泣くときは、しっかりと泣いてください。僕も看護師さんも、オロオロも驚きもしませんから大丈夫ですよ」
完全に、浅永さんが落ち着きを取り戻した。
さりげなく立ち上がり、冷蔵庫からチョコレートを持って来た。
「浅永さん、お腹すきませんか。はい、どうぞ、院長もどうぞ」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとう」
目と目が合った院長の瞳が、うっすらと光っている。