恋愛に無関心の院長が恋に落ちるわけがない
「いいえ、いいえ、構いません。いつかモカちゃんと、お友達になれるように、僕はいつまでも頑張りますよ」
「先生、ありがとうございます。モカ、先生がお友達になってくださるって。喜びなさいよ」
「モカちゃん、ゆっくりお友達になろうね」
柔らかな微笑みを浮かべる院長とは対照的に、小さな体は見るな触るなと全身で自分を守る。
「お話を聞いて、今この状態で観察した感じだと砂ぼこりが結膜を刺激して、炎症が起こっていると思います」
今朝、公園で散歩中に砂ぼこりが舞ったあとから、前肢で擦り始めたみたい。
「なんか病気じゃないですか」
「細菌やウイルスによる感染が疑われるときは、目やにをとって細菌の検査をおこないます。モカちゃんは、感染の心配はないと思います」
「検査は必要ないんですね」
「今のところ、検査は不要です。モカちゃんにストレスをかけたくないです。それに医療費の負担を、モカちゃんのお母さんにもかけたくはありません」
安心感のある院長の微笑みに、オーナーも肩の荷が下りたみたいで微笑んだ。
「いつも、いろいろと考えてくださって、ありがとうございます」
「いいえ、とんでもないです。まずは原因となってるものを取り除くために、洗眼します。モカちゃんの場合は砂ぼこりです。いいですか」
「まずは目を洗うんですか」
「はい、目を洗います。それから原因に応じて点眼薬による治療を行います。大丈夫ですか」
オーナーが納得しているか、一つひとつ確認しながら進めていく。
「では」
「モカが甘えちゃうから待合室にいますね」
「お預かりします」
恒例のようで院長とオーナーが、あうんの呼吸で会話をしている。
そして、ゆっくりと立ち上がり、棚から精製水の洗浄瓶を取って診察台に置いた。
「なにをするのか怖いよね。でも大丈夫よ、安心してね」
そんなに怖がらないで。
常に不安感に襲われている心と体に安心感を与えるために、ふだんよりもゆっくりとした口調で話しかける。
洗面所の棚から膿盆を取って診察台に置いたあと、少しずつ指先を近づけて、モカに匂いを嗅がせる。
強張る体を丸めて、条件反射で鼻先を動かしながら集中して嗅いでくる。
「いい子ね、大丈夫よ。モカは、お利口さんできるね」
徐々に胸もとや顎下を撫でながら、声をかけ続ける。
「いい子はどこにいるの? ここにいたね、モカ」
「先生、ありがとうございます。モカ、先生がお友達になってくださるって。喜びなさいよ」
「モカちゃん、ゆっくりお友達になろうね」
柔らかな微笑みを浮かべる院長とは対照的に、小さな体は見るな触るなと全身で自分を守る。
「お話を聞いて、今この状態で観察した感じだと砂ぼこりが結膜を刺激して、炎症が起こっていると思います」
今朝、公園で散歩中に砂ぼこりが舞ったあとから、前肢で擦り始めたみたい。
「なんか病気じゃないですか」
「細菌やウイルスによる感染が疑われるときは、目やにをとって細菌の検査をおこないます。モカちゃんは、感染の心配はないと思います」
「検査は必要ないんですね」
「今のところ、検査は不要です。モカちゃんにストレスをかけたくないです。それに医療費の負担を、モカちゃんのお母さんにもかけたくはありません」
安心感のある院長の微笑みに、オーナーも肩の荷が下りたみたいで微笑んだ。
「いつも、いろいろと考えてくださって、ありがとうございます」
「いいえ、とんでもないです。まずは原因となってるものを取り除くために、洗眼します。モカちゃんの場合は砂ぼこりです。いいですか」
「まずは目を洗うんですか」
「はい、目を洗います。それから原因に応じて点眼薬による治療を行います。大丈夫ですか」
オーナーが納得しているか、一つひとつ確認しながら進めていく。
「では」
「モカが甘えちゃうから待合室にいますね」
「お預かりします」
恒例のようで院長とオーナーが、あうんの呼吸で会話をしている。
そして、ゆっくりと立ち上がり、棚から精製水の洗浄瓶を取って診察台に置いた。
「なにをするのか怖いよね。でも大丈夫よ、安心してね」
そんなに怖がらないで。
常に不安感に襲われている心と体に安心感を与えるために、ふだんよりもゆっくりとした口調で話しかける。
洗面所の棚から膿盆を取って診察台に置いたあと、少しずつ指先を近づけて、モカに匂いを嗅がせる。
強張る体を丸めて、条件反射で鼻先を動かしながら集中して嗅いでくる。
「いい子ね、大丈夫よ。モカは、お利口さんできるね」
徐々に胸もとや顎下を撫でながら、声をかけ続ける。
「いい子はどこにいるの? ここにいたね、モカ」