恋愛に無関心の院長が恋に落ちるわけがない
「怖い、怖い! 雷様のいびき! 怖いの嫌」
あまりの怖さに震えが止まらない、怖いよ。
「見てみろ、ノインと大恩を、どっしり構えている。笑われたいのか」
両手はタオルを持ったりしているから、院長は腕を下ろしたままみたい。
体に当たる院長の腹筋が笑うたびに、きゅっと力が入って硬い。雷、怖いよ。
「雷様のいびきか、発想がユニークだ」
「落ちた、またきた」
「大丈夫、落ちていない。今にも泣きそうな情けない声を出して」
頭上から激しく突き抜けながら、ドシンガシン揺さぶられるような強い衝撃が何度も襲ってくる。
もう勘弁して、怖いよ。
院長の背中に手を回して抱きつく、スクラブを掴む腕の力が、尋常じゃないほど強くて腕が小刻みに震える。
冷たいスクラブが、院長の体温を熱く感じてきた。
「冷静になる前に離れたほうがいいんじゃないのか。慌てて滑って転ぶのは、火を見るよりも明らかだ」
そ、それもそうだ。
「もう雷様のいびきは止まったから、早くシャワーを浴びて来い」
右手で左肩をひょいと軽く掴まれ、体から離された。
「さっさと行け」
肩をくるりと回され、背中を軽く押された。
院長だってシャワーを浴びて、あの子たちにごはんをあげなくちゃだもんね。
私たちの夕食どうしよう、子猫のお世話もある。早くシャワーを浴びないと。
バスルームにある洗面所の大きな鏡に、上半身が映し出される。
みるみる間に眉間にしわが寄り、全身が熱くなった。
これで、ずっと院長といたの? しかも抱きつくという馬鹿をやらかした。
院長の腹筋が硬いのがわかったってことは、院長は私の胸の感触を。
あああ、やめて。考えるだけで自己嫌悪に陥る。
頭から邪念を振り払いたくて、さっさとシャワーを浴びた。
バスルームから出て来ると、無頓着丸出しのしわくちゃのTシャツとスウェットに、タオルで無造作に力任せに乾かしたような、ふわふわの髪の院長がキッチンに立っていた。
動物以外は無頓着。どうしたらTシャツが、あんなにしわになるの?
こんな姿でも、こんなにかっこよく見えるって、神様は創造力を結集して凄い人を作ったなあ。
ここまで無頓着だと、なにか人を和ませる力を持っているから不思議。
洗濯にも無頓着だから、院長の奥さんになる人は楽そう。
仕事も容姿も完璧すぎるから、服装にも外見にも気にかけないし気取らないって、このくらい抜けどころがあってくれると疲れない。
「シャワー、ありがとうございます」
「スウェットが歩いているみたいだ」
たしか気絶したときも言われたっけ。失礼しちゃう。
院長なんかね、使用済みのアルミホイルみたいに、くしゃくしゃなTシャツ。そう言ってやりたい。
「いい香り、おいしそう。なにか、お手伝いさせてください」
「そこにあるサラダ用の野菜を切ってくれ」
「はい」
あまりの怖さに震えが止まらない、怖いよ。
「見てみろ、ノインと大恩を、どっしり構えている。笑われたいのか」
両手はタオルを持ったりしているから、院長は腕を下ろしたままみたい。
体に当たる院長の腹筋が笑うたびに、きゅっと力が入って硬い。雷、怖いよ。
「雷様のいびきか、発想がユニークだ」
「落ちた、またきた」
「大丈夫、落ちていない。今にも泣きそうな情けない声を出して」
頭上から激しく突き抜けながら、ドシンガシン揺さぶられるような強い衝撃が何度も襲ってくる。
もう勘弁して、怖いよ。
院長の背中に手を回して抱きつく、スクラブを掴む腕の力が、尋常じゃないほど強くて腕が小刻みに震える。
冷たいスクラブが、院長の体温を熱く感じてきた。
「冷静になる前に離れたほうがいいんじゃないのか。慌てて滑って転ぶのは、火を見るよりも明らかだ」
そ、それもそうだ。
「もう雷様のいびきは止まったから、早くシャワーを浴びて来い」
右手で左肩をひょいと軽く掴まれ、体から離された。
「さっさと行け」
肩をくるりと回され、背中を軽く押された。
院長だってシャワーを浴びて、あの子たちにごはんをあげなくちゃだもんね。
私たちの夕食どうしよう、子猫のお世話もある。早くシャワーを浴びないと。
バスルームにある洗面所の大きな鏡に、上半身が映し出される。
みるみる間に眉間にしわが寄り、全身が熱くなった。
これで、ずっと院長といたの? しかも抱きつくという馬鹿をやらかした。
院長の腹筋が硬いのがわかったってことは、院長は私の胸の感触を。
あああ、やめて。考えるだけで自己嫌悪に陥る。
頭から邪念を振り払いたくて、さっさとシャワーを浴びた。
バスルームから出て来ると、無頓着丸出しのしわくちゃのTシャツとスウェットに、タオルで無造作に力任せに乾かしたような、ふわふわの髪の院長がキッチンに立っていた。
動物以外は無頓着。どうしたらTシャツが、あんなにしわになるの?
こんな姿でも、こんなにかっこよく見えるって、神様は創造力を結集して凄い人を作ったなあ。
ここまで無頓着だと、なにか人を和ませる力を持っているから不思議。
洗濯にも無頓着だから、院長の奥さんになる人は楽そう。
仕事も容姿も完璧すぎるから、服装にも外見にも気にかけないし気取らないって、このくらい抜けどころがあってくれると疲れない。
「シャワー、ありがとうございます」
「スウェットが歩いているみたいだ」
たしか気絶したときも言われたっけ。失礼しちゃう。
院長なんかね、使用済みのアルミホイルみたいに、くしゃくしゃなTシャツ。そう言ってやりたい。
「いい香り、おいしそう。なにか、お手伝いさせてください」
「そこにあるサラダ用の野菜を切ってくれ」
「はい」