雨垂れの恋
傘の中
「あーあ、雨降ってきちゃった。」
「琴美、今日雨が降るって天気予報でしっかりやってたよ?」
「朝なんて天気予報見てる暇ないよ!
真緒は早起きだから見ていられるんだよー。」
「まあしょうがないから雨が止むまで待ちな。
すぐに止むらしいし。」
真緒は「じゃあね」なんて言いながらさっさと帰ってしまった。
あいつ、薄情者だ。
傘を忘れた不機嫌を真緒にぶつける。
少しすっきりした。
でも今日は早く帰って来いってお母さんに言われていたんだ。
雨が止むのを待っていたら、それこそ帰りが遅くなってしまう。
雨に濡れるのは嫌だけれど、早く帰りたい。
今日は久しぶりに単身赴任のお父さんが帰ってくるから。
傘を忘れた自分が悪いんだし、帰るか。
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