雨垂れの恋


それに、気恥ずかしい。


腕が少し擦れ合うだけでこんなに緊張するなんて。


距離が近いから当然といえばそうなんだけど。


だけど、こんなになるものなの……?


あまりに緊張しすぎて小野くんのことを見られない。


「……雨、強いね。」


いきなり話しかけられて返事に困ってしまった。


「あ、ああ、そうですね。」


「何それ、変なの。」


また無言。


だけど、それは不思議と苦痛じゃない。


雨が傘を叩く。


「何か話せば」とでも急かしているような忙しい音だ。


私は「無理、この空間が心地いいから」と、心の中で返す。


再び、体がぶつかる。


「……あ、ごめんなさい」


「……ごめん」


考え事をしていたら、真っ直ぐに歩いていなかったらしく、小野くんにぶつかってしまった。


< 6 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop