雨垂れの恋
それに、気恥ずかしい。
腕が少し擦れ合うだけでこんなに緊張するなんて。
距離が近いから当然といえばそうなんだけど。
だけど、こんなになるものなの……?
あまりに緊張しすぎて小野くんのことを見られない。
「……雨、強いね。」
いきなり話しかけられて返事に困ってしまった。
「あ、ああ、そうですね。」
「何それ、変なの。」
また無言。
だけど、それは不思議と苦痛じゃない。
雨が傘を叩く。
「何か話せば」とでも急かしているような忙しい音だ。
私は「無理、この空間が心地いいから」と、心の中で返す。
再び、体がぶつかる。
「……あ、ごめんなさい」
「……ごめん」
考え事をしていたら、真っ直ぐに歩いていなかったらしく、小野くんにぶつかってしまった。