雨垂れの恋


その時、不意に言葉が浮かんだ。


いや、雨と一緒に降ってきたと言う方が正しい。


私は、小野夏輝のことが好きだ。


こんなことは初めてだ。


最初はよくある吊り橋効果かと思っていたけれど、全く違った。


私は、一目惚れをしていたらしい。


「……やっぱりそうだ」


「え、何?」


「な、なんでもない。」


「……そう」


少しだけ、彼の顔を見てみる。


ものすごくかっこいいという訳では無いけれど、端正だ。


今までに見たことのない顔立ちだ。


なるほど、と一人うんうん頷いていると、笑い声が降ってきた。


「さっきから変だよ、木島さん。」


「そうですか?」


「だって、一人で笑ったりしているから。」


いつの間にか打ち解けていた。


私の家まではもう少し。


わずか15分の通学路で、私は恋に落ちてしまった。







< 7 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop