雨垂れの恋
その時、不意に言葉が浮かんだ。
いや、雨と一緒に降ってきたと言う方が正しい。
私は、小野夏輝のことが好きだ。
こんなことは初めてだ。
最初はよくある吊り橋効果かと思っていたけれど、全く違った。
私は、一目惚れをしていたらしい。
「……やっぱりそうだ」
「え、何?」
「な、なんでもない。」
「……そう」
少しだけ、彼の顔を見てみる。
ものすごくかっこいいという訳では無いけれど、端正だ。
今までに見たことのない顔立ちだ。
なるほど、と一人うんうん頷いていると、笑い声が降ってきた。
「さっきから変だよ、木島さん。」
「そうですか?」
「だって、一人で笑ったりしているから。」
いつの間にか打ち解けていた。
私の家まではもう少し。
わずか15分の通学路で、私は恋に落ちてしまった。