総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
身を起こし布団を整え、リビングに向かうと、学生服姿の愁さんがいた。
メガネをかけ、髪を七三に分け
昨夜、大きなバイクの傍らにいたオールバックの愁さんとは本当に別人みたい。
まるで、変装でもしているかのよう。
コーヒーを飲みながらタブレット端末に視線を落としている。
「おはようございます、愁さん」
「おはよう」
どうやらニュースサイトをチェックしているみたいだ。
「てっきり俺が家を出るまで起きてこないかと思った」
「いつも、もっと早く起きるんです。でも、今朝はぐっすり眠ってしまいました。愁さんの用意してくれた布団の寝心地があまりにも良かったので」
それだけじゃない。
暑苦しくもなく、静かで、本当に快適な部屋だった。
あんな部屋で落ち着いて過ごせること自体が奇跡のように感じてしまう。
「朝食はどうする? 食パンとジャムならあるが。冷蔵庫のものも、使ってくれていい」
「ありがとうございます!……愁さんは?」
「済ませた」
「そうですか。それじゃあ、明日は一緒に食べましょうね」
「……時間が合えばな」
「お昼はいつもどうしてるんです?」
「学食だ」
「学食……」
「安くてボリュームあるからな」
「そうなんですね。……学食」
「利用したことねーのか?」
「はい」