総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
冷蔵庫をあけると、野菜、お肉、卵、牛乳、調味料などがたくさん入っていた。
これだけあれば十分に今夜のメニューが決められる。
「自炊してるんですか」
「まーな」
「家のことして、学校行って。それにバイクで走ってちゃ睡眠時間なくなるの納得です。料理、好きなんですね?」
一人暮らしの男性がどれくらいの調味料を揃えているかの標準は知らない。
それでも、キッチンに収納されているそれらは豊富で食にこだわりがあると考えるのが妥当な気がする。
「この家に住み始めた当初は外食ばかりしていたんだが、それじゃカロリーオーバーするし栄養も偏るだろう。試しに始めてみたら、案外面白くてハマった」
健康志向?
……でも、そのわりには――。
「タバコ吸うんですね」
「!」
「わたしの前では気を使って吸わないんですか」
昨夜、お風呂上がりのことだ。
リビングで鼻につく匂いが微かにした。
空気清浄機を稼働させているせいかそんなに強くはなかったけれど。
あれは、タバコの匂いで間違いない。
総長さんの部屋ではしなかった。
灰皿らしきものもなかったし。
燐さんは、わからないけど出会ってから別れるまでの間に一本も吸わなかったから違うかなって。
「タバコって一度吸うとやめるの大変って聞きます」
依存性が高い、と。
いつかの授業で詳しく習ったことがある。
「そうかもな。習慣化してる」
「…………」
「朝から説教する気か?」
「いえ。好きなもの取り上げようなんて思いませんが……」
「なんだよ」
「……ガムとかじゃ、駄目なんですか?」
「は?」