総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
――余計な心配、だろうか。
「……美味しいんですか?」
「別にうまかねーよ。世の中にはマニアックな愛好家もいるが俺はそこまでじゃない。一日に吸う本数も多くないしな」
それじゃあ禁煙への道はそんなに遠くないのでは?
なんて思えてしまうのは非喫煙者、だからなのか。
大人になってからならまだしも
今は、法的にはもちろん、身体のこと考えても良くないし……。
「ちなみに。きっかけとか、あるんですか」
「……くだらねーことだ」
社会への反発心、とか?
愁さんと燐さんは全然違うけれど
どこか、似ているような気がした。
これまで会ったことのない雰囲気のひと。
大きなものを抱えていそうなひと。
って、こんなこと愁さんに言ったら『一緒にすんな』って怒られちゃいそうだ。
「生まれたときから人生が決められた人間は。人形となにが違うんだろうな」
「え?」
「誰しもが抱きがちな子供ながらの夢があるだろ。ヒーローになりてーとか、女子なら魔法少女になるとかいうビックスケールかつ非現実的なものが」
「……はい」
わたしは、小さな頃はお花屋さんになりたいと思っていた。
庭に咲く花が本当に綺麗だったから。
今なりたいかと言えばそうでもない。
花は好きだがそれを職にしようという考えには至らない。
というよりは、夢を抱くこともなくなっていた。
「そんな夢、真っ向から否定された。そもそもに夢を抱くことを許されなかった」