総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
――エリート……。
「始めて吸ったタバコは美味かった」
――!
「いや。実際は、蒸せたし苦ぇし最悪だったが。それでも美味かったんだ」
「愁さん……」
「ただ敷かれたレールを進んでいた俺も。あるとき感情が爆発し、うちを半壊させた」
――!
「母親は利口な俺がキレたのがよほどショックだったのか、うちを出ていったよ。そのときに親父に言い放たれた。正門家の名に恥じない範囲で好きに生きろと。あの出来事がなきゃ俺はここでの暮らしを始めていない。今でも重い鎖は繋がれたままだが、俺は幾らかの自由を手に入れた」
「……表向きは優等生を演じ、夜は別の顔で生きる。夜が愁さんの選んだ生き方と、そういうことですか」
「そのとおりだ」
「すみません。朝から……」
出会ったばかりなのに。
ましてや居候の分際で口出しなんて、厚かましかった。
愁さんに、こんな話までさせてしまっている。
わたしは愁さんのことを知れて嬉しいと感じる。
でも、愁さんは?
話したくもない話をさせてしまったかもしれない。
「いや」
「……?」
「君が俺を気遣って言ってくれたことはわかるし。ルールを破っているのは、俺だ」
愁さんは、立ち上がると
戸棚から取り出した長方形の箱を――。
「いらねぇな」
「……え?」
ゴミ箱に、放り投げた。