総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
それからわたしのうちにやってきたのは
親戚のおばさんと、その息子二人。
彼女たちが越してきてから、わたしの毎日は、輝きを失った。
……悪夢のような日々へと変わっていったのだ。
『遅い』
『さっさとやってしまいなさい』
うちの中では家族扱いされなかった。
家政婦に暇をとらせ、代わりに、家政婦にやらせていたことをわたしがさせられた。
『お嫁に行かせるときに家のことをなにもできないようじゃ恥ずかしいからね』
そんな、もっともなことを言われて
ご飯を作るのも
洗濯や掃除をするのも
なにもかもが、わたしの仕事になった。
二人の息子が浴衣を着て夏祭りに行ったり
またあるときは友人の家にクリスマスパーティーに出向いたりしていた頃、
わたしは家のことをしていた。
それだけならまだ苦じゃなかったと今なら思う。
なにより辛かったのは
……みんなとご飯が食べられず、ひとり寂しい夜を過ごすことだった。
もう、ずっと。
夏は悶える暑さと
冬は凍える寒さと戦い
離れで、ひっそりと生活を送っていた。
やがて
お嬢様学校と呼ばれる名門校に入れられた。
今思えばこれは、建前上は、おばさんがわたしを大切に育てていると周囲へアピールしたいからだったと思う。
お小遣いは一円ももらったことがない。
入学金、授業料、制服代、テキスト代。
最低限払わなきゃ体裁の悪いものだけは買い与えられ、そうでなきゃ自分のために使うような人だった。