総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
おばさんは、息子たちには惜しみなくお金を使った。
パパとママの残してくれた家とお金を、奪われた。
わたしの世話をするなんて申し出たのも財産目当てだったのだろう。
わたしはよそ行きのもの以外は洋服なんてろくに買ってもらえなかったから、新しい制服に身を包まれたときは素直に嬉しかった。
たとえそれが望んで買い与えられたものでなかったとしても。
可愛い制服が、大のお気に入りになった。
『……パパとママに見せたかったな』
姿見の前で制服姿の自分をみて心からそう思ったことを今でもハッキリと覚えている。
この世界には、わたしの制服姿を見てなにか意見してくれる人なんて、一人もいない。
おばさんの息子たちは、わたしと違って
新しい学生服を身にまとったとき
おばさんから、『似合っているわよ』『素敵』などと言われていた。
彼女たちのプライベートな家族写真にわたしが映ることはなかった。
『この家から出ようなんて、考えないことね。誰かに告げ口してみなさい。あたしは――“愛人”だったの。わかる? アンタのパパは、あたしと不倫していたのよ。それが世間に知れたら恥ずかしくて生きていけないわよね? 大好きなパパの名前にもキズがついちゃうことになるけど。耐えられる?』
言われた当初はわからなかった言葉。
それでも子供ながらに
“内緒にしておいた方がいい”と思った言葉。
わたしはおばさんが怖かった。
それになによりパパを悪く言われたのが嫌だった。
おばさんは悪魔のような女性だ。
けれどおばさん以外に、頼れる大人がいなかった。