総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
なにも知らないひとは
わたしを恵まれていると決めつけた。
本当のわたしは夢なんて抱くどころか
未来に希望なんてひとつも見えなかったのに。
今朝、愁さんの話がとても胸に打たれたのは
どこかわたしと同じ孤独感や悲しみを幼い頃に抱いていたように感じたからだ。
わたしも愁さんと同じで、壮大なファンタジーものを読みふけていた時期があった。
子供の頃に読んだ絵本では、
“灰かぶり”と呼ばれた召使い同然の少女がひょんなことから素敵な王子様と巡り合って、魔法つかいや動物たちに助けられ、“運命の恋”を叶え幸せになった。
世界的に有名な魔法使いが出てくる小説では
両親を無くし埃だらけの物置き部屋で肩身の狭い生活を送っていた主人公が、ある日、自分が偉大な魔法使いの子供だと知らされる。
わくわくドキドキの待つ魔法学校へ入学し、苦難を乗り越えながらも仲間たちと幸せに向かっていく。
(わたしにもこんな運命が待ち受けていたらいいのに)
叶いもしないことに憧れた。
その気持ちは人より強かったと思う。
本気で空を飛びたいと思っていたし
運命の王子様には未だに憧れを捨てきれない。
愁さんと自分の大きく違うところは
わたしには、その憧れさえ抱くなという大人がいなかった点だろう。
こんなことを言えば笑われてしまうかもしれないけれど、わたしは妄想の中でだけは、いつでもお姫様になれたんだ。