総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
『可愛くしてあげる』
数日前、わたしを嫌ってるクラスの女の子たちがそんなことを言ってきた。
好意的なものでないのは最初からわかっていた。
期待していなかった。
かといって絶望的な気持ちにもなることはなかった。
……目的を知るまでは。
『これ、盗ってきてよ』
――彼女たちは、わたしに万引きを強要した。
女子高生の間で流行っているらしい化粧品。
雑誌に載っているそれを全種類盗ってくるように指示された。
『買わずにそっと持ってくるの。わかる?』
『みんなやってるから大丈夫』
『バレてもお金払えばいいだけ。うちら相手に小売店の店長が逆らわないっしょ』
『ドキドキして楽しいよ?』
どうしてもやりたくなかった。
だから、決死の思いで断った。
(……いやだ)
『ふーん。じゃあ、別のお願いする』
そういうと、その子は
自分の“ともだち”に会って、
“あるものを渡して”と頼んできた。
『これならサルでもできるよね』
『なんのリスクもないし』
『断る意味もわかんないよ』
――それくらいなら。
たとえばケーキを買いにつかわされるくらいのものだと、引き受けた。
万引きのような犯罪性はないだろうと思って。
――その考えが甘かった。
ありえなかったんだ。
暇を持て余し退屈をイジメ行為で満たす彼女たちが。
今更わたしに使いパシリ程度の要求を与え満足することなんて――。