総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
普段ならまず出歩かない夜遅くに、足を踏み入れたことのない街まで向かった。
門限ははやかったけれど、
家を抜け出すことは容易にできた。
わたしがいようがいまいが、
おばさんは気にもしていなかったから。
――指定の場所は、渋谷。
そう。これは、昨日の夜の話だ。
指示通り制服を着て行った。
そこでおかしいと気づくべきだった。
はやく手に持つ紙袋を渡したい
その一心で、わたしはそこに立っていた。
補導されてしまうのではないかとヒヤヒヤした。
けれどひと通りも多くはなく、警察のような人は見当たらなかった。
『……××さん?』
ふいに名前を呼ばれて顔をあげると、そこには――。
『聞いていたとおり。私好みの童顔だ』
……知らないオジサンが立っていた。
思わず叫びそうになった。
だけど声が、出なかった。
クスクス クスクス
あの子たちがどこかで
わたしを嘲笑っているような気がした。
嫌な予感しかしなかった。
はやくこの場を離れなきゃと思った。
『あの。これ』
紙袋を渡すと、オジサンは
『はやく使いたいの? 慌てないで』
よくわからないことを言った。
次の瞬間。
『さあ。行こうか』
オジサンが、わたしの、手首を掴んだ。