総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)


どこに、行くんですか。

あなたは誰ですか。


言いたいことが、なにも、言えなかった。


(助けて……っ、)


掴まれていない方の手に持っていた紙袋で

オジサンを、思い切り、殴った。


紙袋は軽くて武器になんてなるはずもなく。

ダメージなんてちっとも与えられなくて。


『……なにするの?』


わたしに抵抗され、

オジサンが不機嫌になるかと恐れたとき。


『今から私を楽しませてくれるんだね?』


――余計に、喜ばせてしまった。


もう、駄目だ。


わたしはこのひとにおかされてしまう。


世間のことをよく知らないわたしも

それだけはわかった。

未だかつて感じたことのない負の感情を抱いた。


見ず知らずの人間から与えられる恐怖。


それは同級生からイジメられるよりも

おばさんからの仕打ちよりも。


比較できないくらい恐ろしいもので。


――…消えたくなった。


はやく、パパとママのいる場所に、いきたくなった。


この世界にわたしの居場所はもうない。


そう思った。


……そんなときだった。


『お待たせ』


――天使が、舞い降りたんだ。

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