総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)


なにが起きているか理解できないわたしとは裏腹に、取り乱したおじさんが天使の胸ぐらをつかむ。


振り上げた拳。


「クソガキめ!!!」


(いやっ……!!!)


思わずギュッと目をつむってしまった。


――すると。


『◯×銀行の××部長サン』


天使が、悪魔のような一言を放つ。


『なっ……』

『死に急ぐの?』

『…………』

『最初に言っておくとボクはオジサンが死んでも悲しくないし、コロすことにだってなんの抵抗もないからね』


目を開けると

オジサンの動きが停止していて。


殺気に満ちていたのに

完全に戦意を喪失しているように見えた。


『ちょうど新しいの買ったとこでさ。切れ味試したかったんだよねぇ。そのなさけない腹――ザクっと。やっちゃっていい?』


オジサンになにかを耳打ちしていた

あの子の横顔は、あまりにも美しく



『……いや、待てよ。ここで生ゴミ製造するよりも。社会的に死んでいくところを眺める方が愉快かな。そしたらボクは手を汚す必要もないしね』


この世の生き物なのか疑ってしまうほどだった。

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