総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
マンションの下に降りると、総長さんのバイクが停まっていた。
「つけてろ」
「……!」
うっすらピンク色のマスクをかけられる。
「念の為に顔隠しとけ」
「……はい!」
不安がまたひとつ、取り除かれた。
ここが知らない町だとはいえ、知り合いに会うんじゃないか。
おばさんに居場所がバレるんじゃないか。
そんな恐怖が、顔が半分隠れることでやわらぐ。
……どうして総長さんは、こんなにも
わたしのことをわかってくれるの。
「愁のうちにストック置いてきた」
あ……
さっき、なにか袋をリビングのテーブルのうえに置いていましたよね。
あれはマスクだったんだ。
「ありがとうございます!」
「ん」
「……!」
ヘルメットを、ポンと被せられる。
(……わたしのヘルメットだ)
桜模様のヘルメット。
「羽織れ」
薄手のカーディガンを、そっと制服の上からかけてくれた。
「これも履いてろ」
「……ジャージ、ですか?」
足を守れということだろうか。
「しっかり捕まってろよ」
「はい!」
わたしに会いに来る間も
こうしたほうがいいだろう、とか
色々と考えてくれたことがひしひしと伝わってくる。
(……嬉しい)
わたしは、総長さんに
もらった以上の恩を返せる日がくるのだろうか。
なんだか既に
してもらったことが大きすぎて
何年かけて返せばいいか検討もつかないよ。