総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
――前途多難。
その四文字が頭に浮かぶも、心折れるまい。
これまで受けた仕打ちに比べればどうってことないし、働くということはお金をもらうわけで、それがラクなはずない。
なにより今のわたしには幻さんがついてくれている。
それだけで、百人力だ。
「明日から、よろしくお願いいたします!」
「……でけえ声だすな」
「失礼しました! お疲れ様です!」
挨拶をして、一礼をすると事務所から出た。
「お待たせしました……!」
「おう」
幻さんがヘルメットを被せてくれる。
……自分で被れるのに。
でも、このむず痒い瞬間が、たまらなく好きだ。
幻さんのうしろに乗っていると、安全運転だってことに気づく。
スピードは出ているけれど周りより出すぎているわけじゃない。荒い運転するところなんて想像できない。
「お仕事が決まって本当によかったです。しっかり働きますね……! ありがとうございます」
「礼を言うなら燐に言え」
もちろん、燐さんに感謝の気持ちでいっぱいだ。
素敵な職場を探してくれて、スミレさんに話をつけてくれたんだ。
きっと気も使ったし、その時間に他にやりたいこととかあったよね……?
はやく燐さんに会ってお礼が言いたいな。
だけど燐さんは、
幻さんのお願いだから動いてくれたんだよ。
だからやっぱり、
幻さんにも感謝の気持ちでいっぱいなんです。
「このあと飯でも食って。それからうちくるか?」
「え……」
――幻さんの、おうちに……?