総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
幻さんと愁さんと食卓を囲む。
同じものを、食べている。
――幸せだなあ……。
ああ、どうしよう。
さっきまでは今の幸せを維持したいなんて思っていたクセに。
多くを望んでいなかったのに。
未来が楽しみで仕方ない。
これまでできなかった、たくさんのこと。
諦めずにいてもいいんじゃないかって。
友達作りも、お洒落も、それから恋も。
したいこと、願いたいことが
この先、どんどん増えてしまいそう。
「おい。泣いてんのか」
向かい側に座っている愁さんからそう言われ、自分が涙をながしていることに気づいた。
「……あ。あれ、なんでだろう」
「まさか。口に合わなかったとか言うんじゃねーだろうな」
「そんな……! すっごく、すっごく美味しいです」
「夕烏」
隣に座る幻さんから、頭に手を乗せられる。
「ここに来てよかったな、お前」
「……はい」
ねえ、パパ、ママ。
わたしはこの夜
嬉しくて、嬉しくて
たまらなくなって
涙をたくさん流したんだよ――。