総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)


スミレさんが出勤してきたのは、開店時間の8時になる直前だった。


「あら。今日は、もうこんなにパンが並んでるわね。ユウちゃんが並べてくれたの?」

「はい。おはようございます!」

「おはよう。少し休憩したら?」

「え?」

「ここは、やっぱり焼き立てが売りでしょ。その分、一日に何度もパンを焼くの。同じことの繰り返し。全てはお客さんに満足してもらうために」

「なるほど……」

「だからね、ユウちゃん。休めるときに休んでおいてね。よかったら好きなパン食べて。待ってて、紅茶入れるから」

「……あの。一番弟子さんは」

「あの子はまだしばらく厨房にいるんじゃないかな。体力バカで、トレーニングがてら働かせてるところもあるからあまり気にしなくていいのよ。声掛けなくても勝手に好きなときに休んでるわ」


(トレーニング……とは)


髪色は派手なものの、短髪なせいか、なんとなくだがスポーツ少年という雰囲気があった。


サッカーというよりは。

どちらかというと、野球少年……?


『重くて持ち上がらない? ふざけんな』


材料の袋を運ぼうとして持てずにいると叱られた。


『そこに立つな。邪魔だ』

『やめちまえば』


――と、まあ。


機嫌を絶賛損ねさせ続け、今に至る。


はやくもクビになりそうな予感がぷんぷんしている。

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