総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「まだ若いだろ。遊びたい盛りなんじゃねーの。なのに頑張れる理由ってなんなの」
頑張っているという自覚はない。
新しいことへのチャレンジにわくわくしているくらいだ。
「やっぱり、はやく一人前になりたいですし。今めげてちゃ、ここを紹介してくれた人の顔をつぶすことになりますよね。そんなの……自分が叱られるより辛いです」
「…………」
「っていうか、一番弟子さんもお若いのにお店に並べるパン全部作れるの凄すぎます。みんな寝てる時間から働いて、遅くまで働いて偉いです!」
「はあ?」
「さっき、いただきましたよ。焼き立てのパン。すっごく美味しくて本当にほっぺが落ちそうでした!」
「……当然だ」
「一番弟子さんの手って、魔法の手みたいですね」
「お前はシータか」
「え?」
「……なんでもねぇ。よくもまあ。そんなにベラベラと話すな、こんな愛想ない男に」
誰かに似ていると思ったら、出逢った直後の愁さんに似ているんだ。
それも燐さんにツッコミを入れているときの雰囲気とそっくり。
眉間のシワも。
「ちゃんと相づちうって、話し相手になってくれてるじゃないですか。大嫌いで話したくもなければ、そんな否定的な言葉さえ出ないと思いません?」
「うわ……。予想外にポジティブ。うぜぇ」