総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「わたしも美味しいパンが作れるようになりたいなあ。三年くらい修行したらなれますか?……いや、それは調子に乗りすぎてますかね……」
こんなに美味しいんだ。
ひょっとしたら、一番弟子さんは子供の頃からスミレさんに教え込まれたのかもしれない。
「はあ?……お前三年もうちに居座る気かよ」
「え!? 三年いちゃマズイ感じですか」
見込みなければクビ、なんて展開だけは避けたい。
せっかく用意してもらったんだし。
「石の上にも三年っていいますよね。過酷な修行も耐え抜いたら報われるって」
「もしかして。将来自分の店もちたいのか?」
「……え?」
「って、お前の話はどうでもよくてだな――」
「これといった夢はないんです。ただ、今生きていくためのお金が必要で。社会のこととか、いろんなこと学んでいかなきゃならなくて。そうでないと、周りの人たちにお世話になりっぱなしなんです」
「……そうかよ」
「それとは別に、純粋に一番弟子さんみたいに技術持ってたらカッコイイなって思った気持ちも大きいです。やり甲斐のある仕事って、いいですね!」
「たった数時間雑用させられただけのお前になにがわかる。……おととい来やがれ」
「す、すみません。これでもわたし、根気だけはあるんです。ただ、心配していることが他にありまして。精神面とか技術面じゃなくてそこがダメだったらどうしようと考えているのですが。一生懸命やらせてもらいたいです」
「……心配していること? なんだそれ」