総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
今度は『知るか』『どうでもいい』と流されずに、聞き返してくれた。
「ズバリ、体力です」
「はあ?」
「貧血とか、腹痛とか。これまでのわたしなら、室温の高い場所での連続した立ち仕事ともなると……倒れていたと思うんですが。今のところ、無事です!」
「なあお前なんでここに来た?」
そうか。この人は、スミレさんと違ってわたしがここに来たいきさつを知らないんだ。
わたしが家出少女だってことも。
黒梦と関わりがある、ということことも。
「運命……としか」
「さっむ」
「冷房かけすぎですよ」
「いやお前がさみいんだよ」
「裸になられずに済んでよかったとしましょう」
また上半身裸になられたらたまらない。
「うるせーよ。海とか行ったことないんだったか。でも、彼氏のハダカは見てんじゃねーの」
「……っ!? な……、見て、ませんけど!?」
「ああ。今のセクハラか」
「……いえ。別に。大丈夫です」
ビックリしただけで嫌な気分はしなかったから。
一番弟子さん、口は悪いし敵意さえ向けてくるけど、悪い人じゃない気がする……。
きっとそれは
お仕事に対しての姿勢がいいこと。
美味しいパンを作れること。
そんな尊敬できるところも多くあるから、そう感じずにはいられないのだろう。