総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
そのとき。
バイクのエンジン音が聞こえてきた。
仕事が終わってすぐに
【今あがりました】とメールを送っておいたのだが。
「幻くんじゃない?」
「多分そうだと思います!」
――もう来てくれたんだ。
「明日もよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします。お疲れ様でした!」
店前に停められたバイクの傍らには――。
「待たせたか」
「いえ! 全然です。幻さんも、お仕事終わりました?」
「いや。思ったより仕事入ってな。愁のとこ送ったら戻る」
「そうなんですか……」
「今日はうちに連れて帰ろうと思ったのに。おあずけだ」
(お、おあずけ……)
「こんな時間まで、疲れただろう。ゆっくり休め」
この時期の空は、まだまだ明るい。
冬になれば同じ時間でも日は沈み始め、じきに暗くなる頃だろう。
「夜。会いに行ってもいいか?」
「も、もちろんです。ご飯作ります」
「無理はするなよ。眠けりゃ寝てればいい」
「……作りたいんです」
「そうか。もうひと頑張りできそうだ」
わたしは、幻さんの負担になっている。
送り迎えなんて、しんどいに決まってる。
わたしが狙われているせいで気も張らなきゃだし。
それでも、幻さんは、わたしといてくれる。
【惚れてなければな】
サトルさんの言葉を思い出す。
幻さんは、わたしのこと……。
「色々と、聞いて欲しい話があります」
「ああ。夜になったら聞いてやる」
聞きたいことも……あるんです。
「新しいことだらけで。ドキドキしてます」
「そりゃいい。だがな。もっとドキドキさせてやるよ」