総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
幻さんの言葉ひとつで、
わたしは溶けてしまいそうになる――。
「ただいま帰りました!」
「……おかえり」
「あれ。愁さん、テンション低くないですか」
「君が高いだけだろう」
リビングのソファに横たわっていた愁さんは
「……なにかあったんですか?」
生きたシカバネみたいになっていた。
「ただ、学校という場所があまり肌に合わなくてな。帰ってくると虚無ってしまう」
「そうなんですか」
好きで優等生やってるわけじゃないということは話を聞いて伝わってきていたが、そこまでだったんですね。
学生モードになるには相当な体力を使うらしい。
力が抜けきっている。
(……学校で、無理してるんだろうな)
「幻は?」
「仕事に戻りました」
「そうか。俺のことは気にせず部屋で休んでくれ。それとも俺が部屋に行ったほうがリラックスできるか?」
「そんなことは!……あ。お土産があります」
「土産?」
わたしは、袋を掲げて見せた。
「パンです!」
「……パン」
「わたしの職場、パン屋さんになったんです。おやつ、夕食、夜食にいかがですか」