総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
スミレさんが『うちのパンの味、知っておいてもらいたいから』とたくさんくれたのだ。
受け取ったときは帰ってこれを食べて研究しようと思っていたのだけれど、今思うとあれはスミレさんの好意だったのかもしれない。
「君が作ったのか」
「いえ。まだわたしは、見てるだけで。道具を出したり洗ったり、アシスタント的なことしかしてません」
「まあ、そうなるよな。初日なんだし」
愁さんが身を起こす。
幻さん程じゃないけど、愁さんも、背が高い。
「……うまい」
「ですよね! 大好きになっちゃいました」
「燐の知り合いの店だと聞いたが」
「はい。スミレさんっていう、すごく綺麗な方がオーナーさんで」
「スミレ……?」