総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「……もしかして君は」
愁さんが、言葉を切る。
「いや。なんでもない。……さて、俺は勉強してくるかな」
ひょっとして
わたしの家のことを聞こうと思ったのかな。
うちが明るい家庭でないことは、今の話からはもちろん、家に帰りたがらないことでもう十分に伝わっているよね。
でも、気を使って、聞くのをやめてくれたんだ。
……わたしから話すまで待ってくれているんだ。
「受験勉強ですか」
「それもあるが、目下は定期テストと模試だな」
わたしも学校に通っていたら、今頃テスト勉強をしていただろう。
「成績落とすわけにはいかねーんだ。一番で居続けること。いい大学に入ること。そうでなきゃ俺は恥さらしなんだと」
「そんな……」
「今じゃ、やることさえやってりゃ野放しだから。ラクになった方だけどな」
俺はまた君になんて話をしてるんだろうな、と愁さんは苦笑いした。
「よかったですね」
「は?」
「愁さんは、幻さんたちと一緒のときは楽しむことができているんですよね」
「……まあな」
わたしと一緒だ。
「青春やれてよかったですね!」
「ああ。俺は走ることができてなかったら、とっくに壊れてた」
わたしだって、そうですよ。
みなさんと巡り合えていなければ。
どこでどうなっていたことか――。
「燐さんみたいに可愛い仲間もいますしね」
「いや燐は悩みの種でしかねえわ。可愛いなんて一度も思ったことがねぇよ」