総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
――!?
「幻っ……さん」
「ヤケドしなかったか。指を切ったりは?」
耳元で、囁かれる。
「そこまでのこと、やってないですよ。パン作りは見て学ぶ段階なので」
「食ってみたい。夕烏の作ったパン」
「……頑張ります。わたしも、はやく皆さんに食べてもらいたいです」
「皆さん? “総長さんに”……だろ?」
「ひゃ、」
抱えられ、
ストンとおろされたのは――ソファにかけた幻さんの膝の上だった。
「……っ、幻さん」
「たくさん話を聞いてやるつもりできた」
「え?」
「あるんだろう? 俺にしたい話が」
……はい。
たくさん、たくさんあります。
「働くって、楽しいですね」
「それを聞いて安心した」
近い。
「明日も出勤か?」
「はい」
近いよ、幻さん。
「迎えに来る。……いや。今夜はここに泊まるか」
愁さんのおうちに、お泊りするんですか?
「それならゆっくりお前の話を聞いてやれる。眠る直前まで」
それって。
いっしょのお布団で、眠るんですか。
「……幻さん」
「ん?」
「わたしって」
――幻さんの、なんなのでしょうか。