総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「……こんなんでいいのかよ」
「へ?」
「戻るぞ。そろそろ焼き上がるから――」
大きなエンジン音に、会話が妨げられる。
バイクの音……?
こっちに近づいてくる。
幻さんじゃ、ない。
今仕事中だし。
――明らかに故意に出されているエンジン音。
こんな商店街に大きな音をたててやってくるとも思えないよ。
「戻るぞ」
「は、はい」
「まったく。迷惑な連中だよな」
「え……」
「騒いでバカやって。害でしかない」
「そんなこと、ないですよ」
「あ?」
できるだけ迷惑にならないように走ってる人たちもいる。
彼らはバイクが好きなんだ。
わたしは幻さんたちが害だなんて思わない。
愁さんが走ることで息抜きをしていることも、みんなの関係も、好きだよ。
「……まさかとは思うが。お前のカレシって」