総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「なにせあたしは師匠で。あの子は弟子ですもの」
「それは、パンの話では――」
「黙って俺に任せとけばいいんだよ」
――!?
「あら。うっかり地声が」
スミレさんから。
急にハスキーボイスがっ……。
――めちゃくちゃイケボだったのですが。
「あたしの名前、韮崎蓮(にらさき れん)っていうの。韮(にら)と菫(すみれ)って漢字、なんだか似ているでしょ? だからスミレってつけたんだけど。まあその話は、今度ゆっくりね」
レンさん……って。
(男性……!?)
店の扉を開けたとき、スミレさんのカーディガンが、風ではらりとめくれる。
現れたのは――、タトゥ。
(花……?)
生まれて初めて、本物のタトゥを間近で見た。
「やだ。驚かせてごめんね?」
「…………」
ここは、とある商店街の
小さいけどお洒落なパン屋さんで
働いているのは綺麗なお姉さんと
無愛想に見えて案外親身な童顔お兄さんだと
そう、思っていたのに。
「ちょっと表、掃除してくるわ」
……どうやらわたしは
少し、勘違いをしていたようです。