総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「俺一人で十分だ、スミレ」
「いいからアンタは焼き上がったパン並べといで。オーナー命令よ」
「……了解」
サトルさんが、店に戻ってくる。
「だっ……大丈夫ですか?」
「なんともねえよ。行くぞ」
わたしのせいだ。
「スミレさんは……」
「スミレの強さは軍人並だ。任せときゃ平気だろ」
今一度確認しますが
ここ、街のパン屋さんですよね。
なんでパン屋さんにそのようなお方が!?
「おら。ぼーっとしてんな」
「すみません……!」
種類ごとに並べていく。
朝出した分はもう大半売れてしまったようだ。
やっぱり人気店だなあ。
しばらくして、パンを並べ終えたとき。
入口の扉が開く音が背後から聞こえた。
「いらっしゃいま――」
振り返った瞬間。
なにかに、包み込まれた。
「……幻さん?」
考えるより先に言葉が出た。
なぜか幻さんだと思った。
「夕烏」
――やっぱり。
幻さん、だ。
「怖い思いさせちまったな」
「……っ」
「遅くなってすまない」
そんなことない。
「わたし……の、せいで」
このお店が危ない目にあった。
「ユウちゃん。休憩入っていいわよ」
戻ってきたスミレさんが、微笑む。