総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
幻さんが、ミーアキャット(のようなもの)パンを口に運ぶ。
「……どうですか。お味は」
「美味いよ」
「ほ、ほんとですか!?」
幻さんからの美味しいをもらえて感動していると
「うん。どれも味とか焼き加減はバッチリだよねー。やっぱり生地がいいんだろうね。さすがサトル監修」
「あとは見た目さえクリアしたら店にも出せるな」
燐さんと愁さんも、前向きな意見をくれた。
「ボクはこういう、“ぶさいく”なの好きだよ。ホテルで食べるようなプロの焼いたパンでは出せない味があるよね」
「イモムシだとかなんとか言ってたクセに……」
「それはさあ、愁。女の子を褒めるときは、貶して褒めるのがいいんだよ」
「そうなのか?」
「ただ褒めるだけだと胡散臭くなるでしょ」
「……相変わらず歪んでやがる」
こうして幕を閉じた、パンの試食会。
あっという間に夜になって幻さんと燐さんは帰ってしまったけれど、またこうして集まれたらいいな、と強く願った。
ラセツというチームに狙われていることは穏やかじゃない。
それでも、
【夕烏は、なんの心配もいらない】
幻さんは、そう言ってくれた。
――ねえ、幻さん。
弱虫でごめんなさい。
だけど、今は
その言葉に甘えても、いいですか。
わたしがなによりも恐れているのは
この世界から出ていく日がくることなのだ。