総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)


「ねえ、幻。帰ってよかったの?」


燐と、愁のマンションのエントランスをくぐる。


「なにが言いたい」

「だからー。パンだけじゃなくて、ユウちゃんの味見、しなくてよかったの?」


夕烏の味見なんてしたら

……今度こそ、止められる気がしねえ。


「あー。愁に気を使ってるんだ? ボクなら気にせず始めちゃうけどなあ。それか、バレないようにコッソリ――」

「あまり乱したくない」

「その割には感情むき出しだったよ?」

「……俺が?」

「“俺の夕烏にパン作り教えやがって”みたいなー。怖い空気出てたよ。ユウちゃんは気づいてなかったけどさ、幻はサトルに妬いてるんでしょ」

「…………」

「まあ、ユウちゃんに“俺のもの”って宣言してた時点で、幻は、いつもの幻じゃなくなってたわけだし? 今更乱れるとかないと思うけどねぇ。ボクとのハイタッチ止めたり、愁にうしろに乗せるなって言ったり。ブレーキなんて、とっくに壊れてるでしょ〜」


燐の言うとおりだ。

普段なんとなしにしていることが、夕烏のことになると、ムキになってしまう。


それでいいと愁は言った。

だが、夕烏は?


俺の独占欲をどう捉えていく?


「っていうかサトルとは会った?」

「いいや」

「だよねー。ユウちゃんが幻の女だってことをサトルが知ってたら、仲良くするか微妙なラインだもんね」

「……どこまで知ってる?」

「んーと。サトルが、暴走族を毛嫌いしてるってことくらいかな?」
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