総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
捜索願が出されれば、
夕烏はうちに連れ戻されるかもしれない。
還りたくない世界に引き戻されてしまう。
なにより
――俺の元から夕烏が離れて行ってしまう。
(どうすれば夕烏を手放さずにいられる?)
「……ねえ、幻。ユウちゃんに入れ込みすぎない方がいいと思うよ」
「なんだと?」
「そりゃあ、いい子だし。かわいいし。甘やかしたくもなるけど、所詮は女の子だ。女の子の気持ちなんて、簡単に変わっちゃうんだから。ましてやユウちゃんはまだあの年でしょ。恋に恋してるとこあるだろうし」
――燐は、女を嫌っている。
散々女好きのレッテルを貼られ、自分でも『お姉さんだいすき』なんて言ってやがるが。
……そこに、“心”はない。
ただ、利用しているだけだ。
生きるために。欲求を満たすために。
「もちろん恋愛を楽しむのは自由だし。飽きるまで抱けばいいし。あまーく、夢みさせてあげてもいいと思うよ? でも、こっちは本気にならない方がよくない?」
本心からそう言っているのだろう。
コイツの今の言葉には、悪気などない。
むしろ良心から出たものだ。
俺のために言っている。