総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「ここでの生活は、そりゃあ刺激的で。一種のマヤクみたいなとこあると思うんだよね。現実から逃げたいあの子にはうってつけ。男に囲まれて、甘やかされていくんだから。気分いいと思うよ? だけどいつか目が覚めちゃうかもしれないよ。ここは狭い世界だから。やっぱり元いた世界が、あの子の生きる世界だって。そのとき幻は見送ってあげられるくらいにしておいた方がいいんじゃない? 彼氏彼女ごっこも、ほどほどにしてさ――」
「離す気ねえよ」
たとえどんなことがあろうとも
俺は一生あいつを離す気なんてもうない。
「その気持ちが幻のエゴになるかもしれないよ」
そうだとしても。
「果たしてユウちゃんは、なにもかも捨てて幻だけを選べるのかな」
「選ばせる。後悔しないくらい愛してやる」
「……気持ち悪いよ、幻。そこまでいくとさすがに。引いちゃう。愛なんて。……幻想じゃん」
燐の声のトーンが下がる。
幻が俺の夕烏への想いを否定してくるのは予想がついていた。
こいつは
この、今でこそ愛されキャラの燐は
かつて誰からも愛情を注がれずに生きてきたんだ。
何年も。一人で。誰に頼ることもなく。
だから、燐の意見に腹を立てたりはしない。
コイツがコイツなりに俺を心配しているということが痛いほど伝わってくる。
「まあ、ボクは二人が破局に向かうまでの過程をのんびり眺めて楽しむことにするよ。ポンポン振りながら。当分退屈しなさそうだ」
「破局なんてさせねえ」
「頑固だねー。幻は。ジジイみたい」