総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「追えるもんなら追いついてこいやぁああ!!!」
“走ること”だ。
「……愁さんってハンドル握ると性格変わるよな」
「ああ。普段は冷静な判断のできる人なのに」
幻と出会い俺の人生は変わった。
新しい自分に出会えた。
いいや、もしかしたら
これが本当の俺なのかもしれない。
それを見出してくれた。
走る楽しさを教えてくれた。
そんな幻に俺はついていきたい。
そう思ってここまできたのだが。
「バイクが恋人って、寒くなーい?」
怖いもの知らずなのか。
……ただのバカなのか。
問題児・成田燐(なりた りん)。
ついこの間まで中坊だったガキ。
こいつとは、つくづく馬が合わない。
話すのが苦痛だ。
「やっぱり恋人は女の子でしょ」
バイクを愛する連中に向かってこんな爆弾発言をするくらいには空気を読まない。
マイペースな燐をよく思わないメンバーはいる。
だいたい年上への口の利き方もなってねえし。
気遣いなんて一ミリもできやしない。
それでも幻が連れてきたから。
幻に近い存在だから(というよりは燐が一方的に近づいているが)、周りのやつらは燐に一目置いている。
――解せぬ。
なぜこんな社会のルールはおろか、人としてのルールさえままならない(暴走族にルールを守れというのもおかしな話だが)子供がここにいる?
いつ裏切るかわからないような、ガキが。