総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「いくら人目の少ない時間帯とはいえ、俺が送り迎えしてんだ。遅かれ早かれ、夕烏と俺の関係性も夕烏の勤め先もバレていた。買い物のときだって周りから目撃されている。その中に羅刹の関係者がいたと十分に考えられる。そうでなくとも燐のことは疑わない」
「……ほんと。無駄に人を信じるんだから、幻は」
「無駄じゃねえよ。俺は自分の目を信じた」
「甘いよ幻。オレ、簡単に寝返るよ。何人騙してきたかわからない。嘘なんてついても、心が痛まない。幻はユウちゃんと出会ってネジ飛んじゃったけどさ。オレは生まれたときから足りてない」
深々と煙を吸い込むと、それを俺に向かって吐く。
「明日は幻の敵になってるかもよ。ユウちゃんのことぺろっといただくかもよ。あの子、ほんというとそそられるんだ。無垢だからこそ色んなこと教え込みたくなるんだよねえ。まだあの子、まっさらなんでしょ。幻より先にユウちゃんの初めてもらってもいい?」
「そのときは殺し合いだな」
燐と睨み合うのは、これで何度目だろうか。
最初にコイツがあからさまな敵意を向けてきたとき。
しつこく会いにいく俺に不信感を抱かれたとき。
そして、今――。
「信じていいんだな、燐」
俺の言葉に、ふっと笑うと肩をすくめる燐。
「ほんと意味わかんないね、総長様」
「返事は」
「もちろん。オレは潔白さ。この、くだらない命をかけてもいい」
軽快なステップを踏み、俺のバイクにまたがった。