総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
うちに着くと
バイクから降りた燐が、空を見上げた。
「世界はこんなに汚れてるのに。空はそれを隠すかのようにいつも綺麗だよね」
「…………」
「羅刹の姫。会ったことある?」
「知らねえな」
突拍子もなく話題を振られることは日常茶飯事だが、なにか意味ありげなその質問に気をとられる。
「羅刹に姫がいるのか」
「うん。これはボクも仕入れたてのニュースなんだけど。すごく美人だって聞いたから、気をつけないとね」
うちの連中がそいつに心を持っていかれて寝返りでもしないように、と燐は言いたいのだろう。
だが、羅刹に女がいるなんて初めて聞く話だ。
それもこのタイミングで。
――夕烏をかくまい始めたタイミングなんて、これは偶然なのか……?
「かすみちゃんって言うらしいよ」
「なに?」
「あれー。どうしたの、幻。女の子の名前聞いてそんなに反応するなんてユウちゃんくらいだと思ってたのに」
「……いや」
「それからこれは、一番のビックニュース。羅刹の総長。変わったんだって」
「……なんだと」
「もしかして、舐めきったことしてきたの。新しい総長になったからじゃない?」