総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「ここがどこだかわかって連れてきたのか?」
所属しておいてなんだが
ガラの良いとは言えない連中のたまり場だぞ。
このコンビニから離れれば徒歩では駅までは遠く、一日数本しかないバスだってもうとっくに今日の運行は終了している。
カラオケやボウリング場などのメジャー施設もない。
こんな田舎に来たがったのか?
それとも興味本位で俺たちに会いに?
まあ他所のチームに行くよりは格段に安全かもしれねえが。
それでも。
……俺ら、暴走族だぞ?
「にこマーの駐車場」
「そりゃここは、にこにこマートの駐車場だけどなぁ! ちげぇだろ! 俺が言いたいのはそういうことじゃねーよ」
「そんな全力でツッコまないでよー」
……燐と話していると、調子が狂う。
こんな風に感情的になるのは俺らしくない。
初対面の女子の前でなにデカイ声出してんだ。
落ち着け、正門愁太郎。
「幻に紹介したかったんだ」
「はあ!?」
「ほら、この前ちょっとしたろ。姫の話」
そういえば、してたな。
うちに女の子を呼びたいと、突拍子もないことを言いだしたんだ。
聞き流したが。
たしかあれは、幻だって反対していただろう?
「あの」
――なんてか細い声なんだろう。
女子というのは。
こんなにも、
簡単に壊れてしまいそうな生き物なのか……?
「食事付きの宿があるって、聞いたんです」
――は……?
「姫というものになれば。住む場所も、生活も保障されるって本当ですか?」