総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「掃除も、お洗濯も。アイロンがけもやります!」
「そういう問題じゃない」
「へ?」
心を鬼にして。
今は、この子を追い払うのみ。
「君が燐からどんな説明受けたかは知らないが。姫とかそういうの、うちでは募集してないんだ」
「えっ……」
目を大きく開くその子が、俺の言葉にひどく動揺したのが伝わってきた。
流されたわけじゃなく
よほど期待して
よほどの覚悟を決めて
少女は、ここにやって来たというのか……?
いや、そもそもに
君くらいの年のお嬢さんが家を離れる理由。
それは一体なんなんだ――?
「そう、ですか。ここに居させてはもらえないんですね」
そういって、少女は、笑った。
てっきり悲しませると。
泣かせてしまうかと、思ったのに。
彼女は、俺に向かって笑ってみせた。
安堵したわけじゃ……ないだろう。
さっきまでは、ここに居たがっていたのだから。
だったらなぜ。
まさか。俺に気を使っているのか?
――罪悪感が芽生える。
別に俺はこの子を傷つけたいわけじゃない。