総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「……おい。幻のやつ、今なんつった?」
「さあ。ボクにはよく聞こえなかったよー。でも、あの幻が女の子と話してるって新鮮だね! おもしろいもの見れちゃった! ムービー撮っておこうかな〜」
「テメェも懲りねーな。次から次へと、」
「愁の説教うざーい。学校の先生よりオヤジ臭いし」
「ンだとクソガキ!?」
ああ、愁と燐がいつもの喧嘩を始めやがった。
だがそんなことより。
目の前の生き物の頭に、手を伸ばす。
周りがざわつく。
「……総長、さん?」
――やわらけえ。
なんだこれ。
すっと指に通って抜けていきやがる。
サラサラの、長い、黒髪。
つーか。
なんでこんなに小さい……?
「いくつ」
「じゅ、15です」
「中学生?」
「いえ、高校生……でした」
同級生だよー、と燐が言っている。
愁との言い合いは中断されたらしい。
「過去形か」
「はい」
「働き口探してんの?」
「そうです。だから、燐さんに紹介してもらった“姫”になれたらなーと……思ったんです」