総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)


「おい燐。この子、どこで拾ったんだよ」

「シブヤー。変なやつらに絡まれてたんだ。で、僕がタクシー乗せてここまで運んできたってわけ。困ってる女の子は助けてあげたいなって。優しいでしょ?」


(……困ってる?)


「あのなあ。限度ってものを考えろよ。迷える少女の保護者になれるようなやつ、ここにはいねーだろうが」

「怒らない怒らない。愁がそんな怖い顔しちゃ、ユウちゃんビックリしちゃうよ」


――ユウ……。


「ちゃんと家まで送ってやるから。住所教えな」

「家には……! 帰りません」

「は?」

「渋谷まで送っていただければ……いえ、適当にどこかの駅まで連れていってもらえれば、あとは、なんとかします」

「なんとかって言っても。じきに終電もなくなるぞ」

「愁のひとでなしー。いたいけな少女を野放しにするの? 危ないよ。せめて今晩だけでも泊めてあげたら?」

「あっ……アホか。さすがにそれは……」

「あれぇ。もしかして、意識してるー? 二歳下のボクは愁にとってガキなのに。ユウちゃんなら女の子として見られるんだ。ふーん。愁ってそういう趣味だったんだ〜?」

「黙れ。嫁入り前の女子を簡単には泊められねーだろ」

「やっぱりオヤジ臭ーい」

「全部テメェのせいってことわかって言ってるのか? ああ?」


帰る気ねえんだな。


――よくわかった。


「あ、あの。バイクって、乗ったことなくて……。どうすればいいんですか?」

「どうするもなにも。ここにまたがればいいだけだ。足、気をつけろよ。そのパイプに当たれば火傷する」

「えっ」

「……怖いならうちの車を出してやってもいいが」
< 40 / 258 >

この作品をシェア

pagetop