総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「おい燐。この子、どこで拾ったんだよ」
「シブヤー。変なやつらに絡まれてたんだ。で、僕がタクシー乗せてここまで運んできたってわけ。困ってる女の子は助けてあげたいなって。優しいでしょ?」
(……困ってる?)
「あのなあ。限度ってものを考えろよ。迷える少女の保護者になれるようなやつ、ここにはいねーだろうが」
「怒らない怒らない。愁がそんな怖い顔しちゃ、ユウちゃんビックリしちゃうよ」
――ユウ……。
「ちゃんと家まで送ってやるから。住所教えな」
「家には……! 帰りません」
「は?」
「渋谷まで送っていただければ……いえ、適当にどこかの駅まで連れていってもらえれば、あとは、なんとかします」
「なんとかって言っても。じきに終電もなくなるぞ」
「愁のひとでなしー。いたいけな少女を野放しにするの? 危ないよ。せめて今晩だけでも泊めてあげたら?」
「あっ……アホか。さすがにそれは……」
「あれぇ。もしかして、意識してるー? 二歳下のボクは愁にとってガキなのに。ユウちゃんなら女の子として見られるんだ。ふーん。愁ってそういう趣味だったんだ〜?」
「黙れ。嫁入り前の女子を簡単には泊められねーだろ」
「やっぱりオヤジ臭ーい」
「全部テメェのせいってことわかって言ってるのか? ああ?」
帰る気ねえんだな。
――よくわかった。
「あ、あの。バイクって、乗ったことなくて……。どうすればいいんですか?」
「どうするもなにも。ここにまたがればいいだけだ。足、気をつけろよ。そのパイプに当たれば火傷する」
「えっ」
「……怖いならうちの車を出してやってもいいが」