総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「わたし、狭さとかホントに気になりません。協同のお風呂やトイレだって、わたしは平気です。周りの方々が迷惑でなければ」
迷惑なものか。
要らないものは拾わない。
「うちは……やめておけ」
「それじゃあユウちゃん。今夜はボクのとこくるー? 朝まで一緒にいてあげる。あんまり帰ってないから、好きに使っていいよ」
燐のところは避けたい。
「……愁。お前のマンション使ってない部屋あったな」
「お、おう」
「貸してやれ」
「は!?」
愁は高校の近くで一人暮らしをしている。
「でも。その子、まだ15の……」
「頼む」
「幻に頼まれちゃ断われねーな。わかった」
「ただし……ヘンな真似すんなよ」
「あ、当たり前だ。燐じゃあるまいし」
「ひどーい。経験の乏しい愁と違って、心の余裕のあるボクは、突然魔がさすなんてこともないよ」
「ンだと万年発情期……!」
問題は、そこじゃない。
燐のうちはどこかのセレブに用意された高級マンションだ。
たとえ一時的だとしても、得体の知れない女が管理してる部屋に夕烏を置くのが得策だとは思えねえ。
燐のファンは多い。
それゆえ、過激な女からも好かれている。
燐の部屋で夕烏が寝泊まりしていることを知ったストーカー女に逆上されるなんて最悪の事態に発展しかねない。
その点、愁は警察である親の管理下にあるマンションに住む。
燐と違い余計な敵を作るタイプでもねえ。
比較的安心して夕烏を置いておける。
「夕烏。愁のことは、兄貴みたいに思えばいい」
「……お兄ちゃん?」