総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「ンなっ……おにい……ちゃ、」
お兄ちゃん呼びされた愁がうろたえる。
愁は女兄弟もいなければ母親もいないので、女にまるで免疫がない。
「愁お兄ちゃーん。ボクも今日からお兄ちゃんって呼ぼうかな。それとも、愁お兄たん、がいい? おにーいたん☆」
「テメェみたいな弟、絶対にいらねえ……!」
「燐」
「なにー?」
「お前は取り急ぎ、夕烏の働き口探してやってくれ」
「りょーかい。ユウちゃんならいくらでもあるよ。なにせこんなに可愛いんだ。一週間もあれば、サラリーマンの月収くらい……」
「危ねえもん用意したらどうなるかわかってるな?」
「うわー、幻こわーい。ジョークだって。ちゃんと安全なやつ探すけどさあ。その年で親の承諾もないんじゃ限られてくるし。普通の仕事して生活費稼ぐって、なかなかシビアだよ?」
「お前ならすぐになんとかできるだろ」
燐は大きく膨らましたチューインガムを割ったあと、呆れたように笑う。
「……言ってくれるねえ。まあ、ひと肌脱いであげるよ。この前の借りもあるしね」
「頼んだ」
「幻、ユウちゃんの保護者みたーい」
「いや燐。保護者っつーか、これはもう……」
「なあに? 愁おにいたん」
「それやめろ気色わりい……!」