総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
バイクって
当たり前だけど運転手さんとの距離が近い。
初めて乗るドキドキと。
会ったばかりの男の人
――それも、総長さんと、こんなにもくっつくなんて。
……忘れられない夜になりそう。
借りた真っ黒なヘルメットは、顔まで覆うタイプのものだった。
これ、総長さんがいつも使ってるやつ……だったりするのかな。
総長さんはヘルメットを被っていない。
やばいよ。捕まっちゃう……!
っていうか危なすぎる。
もし、転んだらって考えると、大変なことになる。
――わたしに貸してくれたせいだ……。
「降りろ」
「……はい」
(ここが、総長さんの家……?)
着いたのは、なにか、お店のように見える建物のある敷地内だった。
正面でなく裏手に停められたバイクからおりると、一階を通らずに外の階段から二階へと上がる。
「ここに住まわせてもらってる。週末は店に出る」
「……住み込みで、働いてるんですか?」
「そんなところだ。こっちは趣味みたいなものだが」
(こっちは……?)
実家は、このあたりじゃないのかな。
「この下の階って……」
「バイク屋。平日は朝から日が沈むまで酒屋で働いてる」
「お仕事二つもしてるんですか?」
「ここでは店番程度のことしかしてねえ。給料だって、あってないようなものだ。それでも部屋を提供してもらっているし、バイクいじるのに最高の場所で。俺の家といえる場所はここしかない」