総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
タップして、画面を切り替える。
(こっちは連絡しておくか。……だるいけど)
数件の着信履歴。
それらはすべて同じ人物からのものだった。
「カノジョかよ」
舌打ちをしてコールしようとした、そのとき。
先に相手からかかってきた。
「ハイハーイ。あなたの天使、燐だよ」
わざと甲高い声で電話に出た。
オレの特技はイロイロとあるけど
そのひとつは、女声を出すことができること。
あっさり性別を勘違いさせられる。
昔、この手で男を騙して遊んでいた。
女装して、
ナンパしてくるオトコやテレビ電話で……
って、今この話はいいか。
『ざけんな、どこにいやがる……!』
――こいつに色目は通用しない。
「どうしたの、そんなに慌てて。冷静な愁(シュウ)にしては珍しいねー?」
『テメェがなかなか出ないからだろうが!』
「お取り込み中だったんだって。デート中、あからさまにスマホいじるの失礼でしょ」
『俺からの連絡には出ろ』
「あはは。束縛系カノジョみたーい。ボクの声がそんなに聴きたかった?」
『キモいこと言うな。先輩命令だ。……その様子じゃ無事みてぇだな?』
電話口の向こう側から、男の威嚇するような声が聞こえてくる。
あー…、そっちにお客さんが来てるんだ?
それもオレ絡みの。
一人ではない。
少なくとも二人か……三人。
「無事って? 綺麗なお姉さんにご飯ご馳走してもらってー。それから踊ってきたけど?」
『そうかよ。今日はもう大人しくしてろ。……ややこしいからこっちには顔出すな。わかったか?』
「え?」